9月11日、12日と2日間、紀尾井シンフォニエッタのコンサートに出演させていただきました。素晴らしいプレイヤー達が名を連ねる、日本を代表する室内管弦楽団です。
元タカーチ・ピアノ・トリオ、クロコスモス弦楽四重奏団の創設者でヴァイオリニスト、ブダペスト祝祭管弦楽団のコンサートマスターを経て、現在は指揮者として活躍している、タカーチ・=ナジさんがゲスト・コンダクターでした。
ガーボル・タカーチ=ナジ氏、”良い音楽の伝統を体現している音楽家に出会うことができたように感じました。音楽とは何かを”話すこと”。全く平らなフレーズというのは一瞬たりとも存在せず、必ず”行く、か来るか”のシェイプの中にあること。小さな言葉=シェイプが、大きなフレーズを作る。まるで大きな川の流れは、必ずいくつもの様々な形や方向を持った小さな流れが川底に存在していることで成り立っているかのように。言葉の話し始めには、ある程度の息のスピードを伴ったクリアな”発音”が必要なこと。音楽の中のカラーは無限に、そして”常に”移り変わっていくこと。音楽の”キャラクター”を表現するための”音符”であり、ただ”正確”に弾くことが目的ではないこと。良いアンサンブルの「結果」全員の音が”揃うのであって、”揃うこと”が”目標ではないこと、ケア・レスな弓圧は響きのカラーを消してしまうこと、”音量”でなく”音質”が優先されるべきであること・・・etc かつての偉大な音楽家たちカザルスやミルシュタイン、ヴェーグのような音楽家達と同じような”音楽の語法、耳”をもった人だと思いました。
無数の大事なこと、特に我々”現代の音楽教育”が体に染み込んでしまったもの達にとって、本当に大事なことを沢山言ってくれました。それも、ユーモアのセンスを常に失わず、最後まで諦めず、何度もなんども伝えようとしてくれました。我々はとりあえず今の自分の感覚でどう感じるかのジャッジを横に置いて、このような貴重な音楽家から真摯に、もっともっと多くのことを学ぶべきだとおもいました。素晴らしい体験をさせていただき、ただただ感謝です。