このブログでも「身体と音楽との調和」というテーマで何度か書いていますが、このたび弦楽器マガジン「サラサーテ」の誌上にて4月号(3月2日発売)から同タイトルで連載させていただくことになりました。決して順風満帆ではない音楽生活を送っていた24年前、自分自身を変えるため、また新たな自分自身の表現方法を求めてニューヨークに来ました。そのきっかけを得られたのも、その後多くの優れた芸術家や師から学べたのも全て幸運な出会いがあってのことです。僕は目に見える財産を多く持っていませんが人との「縁」にとても恵まれてきました。
そんな数え切れないほどの貴重な出会いの中でも最も多くのことを学ばせてくれたのは、実はこれまで関わってきた沢山の生徒さん達とのものでした。もし僕がごく微力でも人の役に立つことのできる何らかのものを持っているのだとしたら、それらの殆どは生徒さん達とのレッスンから得られたものです。純粋に自分のためだけを考え一人で研究する時間も必要です。しかし、人は本当に自分を必要としてくれている人のために、一生懸命考え試行錯誤している時にこそより多くのことに気がつき成長することが出来るのです。なぜなら目の前の人の身になろうと心から思い、自らの想像力や感性をフルに働かせながら、たとえ欠点であっても自分のしていることに目を背けず向き合うこと無しに、他人の身に起こっている問題の解決策を考えることなど不可能だからです。このことを身にしみて理解出来るようになってから僕自身の本当の成長が始まったような気がしています。
日本を出た頃はこのような形で皆さんに自分を表現することができ、また共に学んでゆける機会が訪れることなど想像もできませんでした。「サラサーテ」さんとのこのとても幸運な出会い、そして彼らの勇気ある決断にはどんなに感謝をしてもしきれません。このワクワクするような新しい旅は始まったばかりでどういった航路をとるのか検討もつきませんが、多くの皆さんにお付き合いいただけたらとても嬉しく思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。